出発まで3分。
俺はすぐに電車に乗り込んで、母さんを振り返る。
いつの間にか大量の涙を流していた。
「おい、大丈夫かよ。今生の別れみたいに泣かないでくれ」
「だって亮が家からいなくなるんだよ?」
「わからないでもないけど」
「嬉しくて……」
「嬉しいのかよ!」
「絶対、高卒で終わりだと思ってたもん」
酷い言われようだ。遅刻はするし、勉強はしないし、苦労をかけたことは認めるけど。
そうだな、俺も高卒で終わりだと思っていた。
そんなとんでもない息子をたった1人で育ててくれた。本当に感謝しかない。
「母さん。ありがとう」
「あんたこそ、今生の別れみたいに言わない!」
怒られた。先に言ったのは母さんなのに、何だか理不尽だ。
仕方なく謝ろうと口を開きかけたところに、電車の発車ベルが鳴り響く。



