咲良や祐介に東京の大学に行くことは話したが、今日行くことは言っていない。



 見送りなんて気恥ずかしいし、このまま行ってしまった方がお互いの為のような気がしたから。



 卒業式が最後になってもいいと、俺は決意してここにいる。



 咲良の声が聞けなくても、祐介の笑顔を見られなくても、今はそれでいい。



 母さんだって変に思っている。
 何かに集中することのなかった俺がいきなり勉強を始めたんだ。咲良や祐介を避けるように。



 何かあったことはわかっているみたいだが、聞いてはこない。



 優しさなのかもしれないが、母さん自身は少し寂しそうで悪いことをしたなと思う。



 母さんが買ってくれたコンビニ弁当を受け取っていると、駅のホームに電車が入ってきた。