「今日だけ、だからな」




 さっき咲良に言ったことを祐介にも言う。
 すると今度は祐介の顔も満面の笑みに変わった。




「よし、行こう! 亮の気が変わらないうちに早く、早く!!」




 祐介が荷物を持って廊下に出る。俺たちも片付けを済ませてから、祐介の後を追う。



 教室から出ると、急に淋しさが込み上げてくる。



 思い出すのは2年までの楽しい日々で、3年は記憶に残るほどのものはなかった。それだけに、なぜか無駄でもったいない1年だったように感じてしまう。




「亮ちゃん、どうかした?」




 前を行く咲良が心配そうに覗き込んできた。




「なんでもないよ」




 卒業。
 ここから卒業して、俺は一体どこへ向かおうとしているんだろう。