「いつ、東京に行くの?」

「まだはっきりとは決めてない。三月後半かな」

「都会の女に騙されないようにね」

「騙されるか!」

「どう見ても亮ちゃん、カモだよ」

「俺は人間だ」

「そうかなぁ」

「悩むなよ」




 バタバタと廊下を走る音が聞こえたのはその時だ。




「いた! オレのバッグ知らない?」




 勢いよくドアを開けながら、祐介が駆け込んできた。




「咲良が確保してる」

「咲良ちゃん!」

「先に帰るなんてすれ違いが起きないような対策をしておいたの。頭いいでしょ、わたし」

「えー」

「ほら、祐介のやつ困ってる」




 どうやら探しまくっていたらしく、安心と疲れが一気に押し寄せ複雑な顔になっている。