リバーシは半分くらいが終わり、黒の優勢。このままいけば咲良に勝てそうだ。




「亮ちゃん、大学は地元じゃないんだよね」




 徐ろに咲良が問いかけてくる。
 リバーシに夢中になっていた俺は驚いて手が止まる。




「ああ。一応、東京」

「都会か。ここから電車で約3時間! 遠いなぁ」




 俺が地元に残る選択をしなかったのは、一緒だと辛かったから。
 わざわざ離れるために勉強していたこと、咲良は気づいていると思う。



 だけど、咲良が理由を聞くことはなかった。




「塾に通っていただけのことはあるね。わたし、地元の大学で精一杯だったよ」

「見直したか!」

「うん。努力ってすごいね」




 悲しそうに笑う姿が見ていられなくて、盤面に目を落とす。