思えばこうやってバカみたいなやり取りするのも久しぶりだ。



 実際、受験で忙しかったのもあるし、俺が避けていたのもあるし、本当に変な高校3年だった。




「わたし、はっきり覚えてるんだ。すごい雨の日。亮ちゃん、ずっと滑り台の上にいたの。びしょ濡れで」




 咲良の記憶によれば、雨が好きなのは昔から変わらないらしい。
 俺が黙っているのを忘れていると判断した咲良は、丁寧に説明してくれた。




「保育園はもう終わってたんだ。わたしが帰る時に亮ちゃんを見つけたの。そりゃあ、びっくりしたよ。ついに幽霊見たのかと思うくらいびしょ濡れで」




 珍しく咲良の手が止まる。
 思い出しているのか、ニヤニヤと笑っていて気持ち悪い。




「亮ちゃんはお迎え待ってたんだよ。あの日、おばさんが仕事で迎えが遅くなるって聞いて。亮ちゃんはショック受けてあんな所にいたんじゃないの?」

「覚えてないな」