あまりの必死さに、俺は負けた。
「今日だけ、だからな」
「うん」
今日だけだと、自分に言い訳をして咲良に向かう。
少し重苦しくなった空気も、咲良の笑顔で変わる。本当に憎めない奴だ。
「ありがとう」
俺たちは適当な場所に座ってリバーシを始めた。本当に久しぶりに咲良と対戦する。
「思い出といえばさ、小さい頃のことを思い出すの」
パチパチと石を置く音が教室に響く。
俺が黒の石を置くと、すぐに咲良は盤面を白にする。さすが咲良だ。話しながらなのに隙がない。
「亮ちゃん。保育園にいた時のこと。覚えてない?」
「保育園? どれのことだ? 俺、そんなに記憶のストックないぞ」
「メモリーカード足しておきなよ」
「容量足りないパソコンみたいに言うなよ」



