「祐介くんが来るまで時間あるだろうし、いいでしょ?」

「やらねえよ」

「始めるよー。わたし、白ね」

「おい」

「今だけでいいから!!」




 悲痛な叫び。
 下を向いていて表情はわからないが、咲良にとっては大事なことみたいだ。




「わたし、卒業する前に亮ちゃんとの思い出が欲しいの! 3年になってからの思い出、ほとんどないんだよ?」

「なんで思い出に拘るんだよ」




 張り詰めた空気は寒さだけじゃないはずだ。
 俺たちの間の溝が深くなっていくような、そんな重々しい空気。



 いつもは咲良が空気を読んで、去っていくだけだった。
 でも今日は違う。きっと心に決めていたんだ。




「……大切だから。わたしにとって亮ちゃんとの思い出は大切なものなんだよ」