「ジョークじゃなくても、俺は幼なじみ以上の仲になるつもりはない」




 背後で物が落ちる音。
 俺は振り返って、落ちたノートに気づく。
 そして咲良にも気づいた。切なげな表情で笑っている。




「もう! 本気にしないでよ」

「咲良」

「ほら、ラブレター欲しいって亮ちゃん言ってたでしょ!」




 泣きそうになっているのが丸わかりだ。わかりやすすぎる。
 ……本気、だったんだ。




「ラブレターがなんでおにぎりの中なんだよ」

「ユーモア的な」

「マジックでラブレターなんて初めて見たぞ」

「絶対に面白いと思ったんだけどなぁ。あ、そうだ。ちょっとジュース買ってくるから、待ってて」




 咲良が走って教室を出て行くのを黙って見送る。
 机に落ちた雫が俺を締めつけた。