「咲良はしっかりしてますよ。ちゃんと迷惑にならないように心がけてます。周りを見て、空気読んで、だからこそクラスのムードメーカーなんです。羨ましいくらいに、なくてはならない存在ですから」
俺は何を語っているんだ。
咲良がしっかりした女であることは、誰よりもご両親が知っている。
それをわざわざ他人の俺が言うなんて、気分を悪くされているに違いない。
「うは! 亮ちゃんがマジでいるよ! 朝なのに起きてるよ! 奇跡だよ!!」
気まずい空気を打ち破るようにキッチンに来た咲良。
撤回したい。空気を読むと言ったことは、俺のミスだ。
「パパ?」
「……ん。そろそろ出る」
「あら、あなたもう出るの?」



