最後のページをめくり終える頃には、視界がにじんでいた。

“私”は思わず口元を手で覆った。


震えが止まらなかった。


ぽたぽたと瞳からこぼれた涙がノートを濡らしていく。

その瞬間、すっと心に何かが落ちてくるような感覚がした。


ああ。

そうや。


これは。



私の記憶だ。



顔を上げれば、そこには優しい顔をした“ハル”がいた。


「結月」


 もう一度その名前を呼んでくれた。

 
 全部、思い出した。


「ハル」


 言いたいことがたくさんあるのになんて言ったらいいかわかんない。


ねぇ、だからとりあえず。


「ただいま、ハル」


 ここからまた始めよう。


 言えなかったこと、やれなかったこと全部しよう。