私はホームルームが終わると部活で活動するための資料を探すことにした。
朔は生徒会の話がまとまらずに放課後また続きをするそうだ。冬はテニスをするために市のテニスコートへ。田村はちびっこの指導をするために小学校へ。そして、司馬君はなにやら女子に掴まり学校案内をしてくれることになったらしい。
私は彼らを見送った後、教室の鍵を閉めていた。…なかなかしまらなかった。私は手と足でなんとか閉めようとした。
「…伊澤さん。」
私がなんとか鍵を閉めたところで誰かに声をかけられた。
「…え。あ、柚木君!」
私は恥ずかしいところをまた見られてしまった。私は彼の顔を見て近寄る。彼は私が近づくとなにやら焦りだした。
「え、っと。…」
「朝はごめん!まさかノートが入れ替わってるなんて思わなくて!私の不注意!本っっ当にごめんね!」
私は勢いよく頭を下げた。
「えっ、あ、いや!俺の方こそ謝らなくちゃいけなくて…!!」
彼は後ろに隠してたノート、私のノートを差し出す。
「あ。よかった。今日英表のノート…。」
私はめくった瞬間表情が固まった。このノートは…。紛れもなくはたから見たら厨二病にあふれたものだった。
「ーーーっ!!!??」
私は言葉にならない声を出して彼に抗議する。
ーやばい!うまく声が出せない!
彼を責めるつもりはない。ただ恥ずかしいだけ。私はそう伝えようとするも言葉にできないでいた。彼は暗い顔で言葉を紡いだ。
「ごめん。こういうのって人に見られたくないよね。故意とはいえ…ごめん。その、こんなこといっても困ると思うけど…」
ー違う。違う!違う!
「違うからーー!!!」
その声は廊下で反響した。私は出しすぎた声と彼の顔を見てハッとする。
ーどうしよっ!びっくりさせた!?
ちなみに彼と私が二人っきりになるのはこれが二回目だ。つまり、一回目は今朝の衝突。いつも私の他に誰かがいる。
「あ、えっと。とりあえず場所変えない?」
私達は歴研部の部室へと向かうことにした。
歴研部は狭い。けれどそこそこの防音が施されている。そして私は扉の鍵を閉めて、向かい合うように座る。
ーどうしよう。空気が重い!とっても重い!!
私は彼を見る。彼も気まずいようで下を見てる。
ー腹…くくる時…かな?こうなったら私のこと病気状態も話そうかな…。
私は口を開いた。
「「あの!!」」
しかし、見事にやってはいけない状態。被りが発生した。
「えっと、お先にどうぞ。」
「いえ。お先に…」
そしてまたしてもやってはいけない行動。譲られると何故かきりがつかないほど譲り合う状態に発展した。
ー私の馬鹿ー!!
私は彼に奥義を使うことにした。
「勝った方から話す!!それでいい!?」
「う、うん!わかった!」
彼も手を出してくる。
「「最初はグー!ジャンケーン!!」」
お互いにグーだった。
「「あいこで」」
またしてもお互いにグー
「「あいこで」」
次はお互いにパー
※以下略
「えっと。とりあえず私が勝ったということで話をします。私は人と変わっているところ…。まあ、周りにそう認知されてるけど。昔からそういうところがあって。それの一つがこの…夢ノートの内容です。」
私は机の真ん中に置かれているノートを手に取る。
「夢ノート…」
彼は何か納得した様子でみつめる。まあ、ノートにそう書いてないし。妄想ノートか夢ノート、願望ノートとか結構痛いノートだと思える内容だ。
「私が見る夢は大体似たことが現実で起こるの。でも、例外はいくつかあって。その一つがとっても稀だけどある人との夢。」
私は夢ノートのページを適当に開いて彼に見せる。
「大体の内容は見た?」
彼はこくんと頷く。
「うん。見てて面白かったからいつの間にかつい…。あ、でも他の人には見せてないよ。」
それは知ってる。聞いたから。私は彼にそのまま話を続けことにした。
「ここにある。《あの夢》っていうのが私が十歳になるまえに見始めた夢。私は黒髪の女性、雪って名付けたんだけど、その人が私なの。そしてその女性の思い人の蒼。雪の知り合いの、女性は茜。で、多分その人の思い人は圭。っていう風に名付けたの。」
私は彼の様子を伺う。話にはついてこれそうだ。
「雪はいつも一人でいるんだけどそんな時蒼はいつも彼女の元を訪れるの。それで彼は近づいた後には必ずどこかへ消えていなくなるの。そして夢から覚める前に必ず近い大きな月を見上げるの。」
彼は私を見て不思議な顔をする。
「…で、このノートはそのことのメモ?」
「…そんな感じです。」
彼はまじまじとノートの内容をみつめる。
「…えっとね。僕もこのノートの内容を読んで気になってたんだ。月の大きさってどのくらいに見える?」
私は気になっていなかった話題を聞いてびっくりする。
「…えっと。大きいっていっても大したほどじゃないよ?今の月がこのくらいの円だとしたら、私が夢で見た月はこのぐらい…かな。これがどうかしたの?」
「えっとね。昔の地球と月の距離は今よりもう少し近かったんだ。十億年前なんて今の月より十パーセント大きく見えていたという説もあるし。脳がその物体を見た印象とかで脚色があるかもしれないけど。」
私はすらすら喋り出す彼を見てびっくりした。理系の人の考えはすごい。
「えっと。つまり…?」
彼は考えるのをやめて私を見る。
「夢の他の印象は?」
「えっと…。妙に現実味があるの。夢の中では草の匂いとかも感じるし。そこにある建物も懐かしさを覚える…かな。」
彼は私の話を聞いて話を切り出す。
「前世…とかって信じてる?」
「…やっぱりそう思う?でも、前世って…厨二病すぎない?」
少なくともこのノートを作る時点でアウトだが。
「うん。前世。可能性はあるんじゃないかな。僕将来の夢は時間学を学ぶことなんだ。」
私はその言葉を聞いて驚く。ちょっと意外だった。理工学とかを習いそうなのに…。
「それで、時間学とは少し違うけど前世とかにも興味はあるんだ。もし証明されたらすごいなって思ってたし。」
私は彼の顔が輝き出したことを見ていた。
「柚木君は私の夢のこと…笑わないの?」
彼はこくんと頷く。私の考えすぎだったようだ。
「…よ、よかった。」
彼は私の方を見てさらに言葉を続ける。
「あと、僕はこのノートにある君が見た風景を元に時代特定とか行ってみたいって思うんだけどどうかな?部活の活動で名目上は昔の生活を調べるって名目で。」
私は考えもしなかったアイデアに心が踊る。前々から個人でそういうことは考えていたものの、いざ調べようと思ったら手をつけられずにいた。
「すごい!私調べたい!」
彼は頷き返しドアの方へ近づく。
ガラッ
「うおっ!?」
どさどさっと二人が雪崩れ込んできた。
「え?朔…に、司馬君?」
二人は笑いながら立ち上がる。
「いやー…。なんか入りにくい状況だったから…。」
「それよりも、夢のこと、話したんだね。」
「うん。私のノート、英表のやつと間違えて持ってきてたみたいで…。それより、いつからいたの?」
「…えっと。僕は結構前から。だから全部知ってます。」
司馬君は頰をかきながらそうこたえる。
「僕は月の話あたりかな。面白いことになってるなって…。」
朔は笑いながらノートを見ている。
「…まあ、もう粗方理解してるよね。」
「まあね。それより、部の方針は決まったみたいだね。昔のある時代の生活について。もしかしたら今後の夢ではさらにキーワードが出てくるかもしれないし。」
私は朔をみる。
「えっ。でもいいの?そんな内容で。前のようにすごい内容とかの方が…」
「いいんだよ。それに昔の生活を調べれば僕の夢も解ける気がするんだ。」
すると柚木君は朔を見る。
「え?白石君も何か不思議な夢を見るの?」
「うん。僕は火だよ。燃え上がる火をずっと見てるんだ。」
「不思議な夢だね。」
私もそう思う。朔の夢は何処か変わっている。私もそうではあるけど。
「面白いことになってきたね!」
事の顛末を見ていた司馬君はそういう。そして笑って朔に向き直る。
「僕、この部活に入る!いい?白石?」
「ああ。大歓迎だよ。よろしくね。」
私も頷いて彼を見る。
「っと。他のメンバーがそういえば見当たらないね。」
朔はそれを聞いてこたえる。
「なんでも運動会の練習で上の体育館とグラウンドで練習しているらしい。」
そういえば一年はソーラン節、二年は組体操…だっけ。あと、一ヶ月だもんね。
「それじゃあ、決まり!まずは夢の時代特定だね。この絵から探していってみようか。」
「それがいいね。とりあえずコピーしておこうか。夢ノートが人に見られたら恥ずかしいだろうし。学校に持ってこないようした方がいいね。」
夢ノートを持って司馬君は部屋を出て行こうとする。私はそんな司馬君に対して怒るも彼の背中を見つめていた。
朔は生徒会の話がまとまらずに放課後また続きをするそうだ。冬はテニスをするために市のテニスコートへ。田村はちびっこの指導をするために小学校へ。そして、司馬君はなにやら女子に掴まり学校案内をしてくれることになったらしい。
私は彼らを見送った後、教室の鍵を閉めていた。…なかなかしまらなかった。私は手と足でなんとか閉めようとした。
「…伊澤さん。」
私がなんとか鍵を閉めたところで誰かに声をかけられた。
「…え。あ、柚木君!」
私は恥ずかしいところをまた見られてしまった。私は彼の顔を見て近寄る。彼は私が近づくとなにやら焦りだした。
「え、っと。…」
「朝はごめん!まさかノートが入れ替わってるなんて思わなくて!私の不注意!本っっ当にごめんね!」
私は勢いよく頭を下げた。
「えっ、あ、いや!俺の方こそ謝らなくちゃいけなくて…!!」
彼は後ろに隠してたノート、私のノートを差し出す。
「あ。よかった。今日英表のノート…。」
私はめくった瞬間表情が固まった。このノートは…。紛れもなくはたから見たら厨二病にあふれたものだった。
「ーーーっ!!!??」
私は言葉にならない声を出して彼に抗議する。
ーやばい!うまく声が出せない!
彼を責めるつもりはない。ただ恥ずかしいだけ。私はそう伝えようとするも言葉にできないでいた。彼は暗い顔で言葉を紡いだ。
「ごめん。こういうのって人に見られたくないよね。故意とはいえ…ごめん。その、こんなこといっても困ると思うけど…」
ー違う。違う!違う!
「違うからーー!!!」
その声は廊下で反響した。私は出しすぎた声と彼の顔を見てハッとする。
ーどうしよっ!びっくりさせた!?
ちなみに彼と私が二人っきりになるのはこれが二回目だ。つまり、一回目は今朝の衝突。いつも私の他に誰かがいる。
「あ、えっと。とりあえず場所変えない?」
私達は歴研部の部室へと向かうことにした。
歴研部は狭い。けれどそこそこの防音が施されている。そして私は扉の鍵を閉めて、向かい合うように座る。
ーどうしよう。空気が重い!とっても重い!!
私は彼を見る。彼も気まずいようで下を見てる。
ー腹…くくる時…かな?こうなったら私のこと病気状態も話そうかな…。
私は口を開いた。
「「あの!!」」
しかし、見事にやってはいけない状態。被りが発生した。
「えっと、お先にどうぞ。」
「いえ。お先に…」
そしてまたしてもやってはいけない行動。譲られると何故かきりがつかないほど譲り合う状態に発展した。
ー私の馬鹿ー!!
私は彼に奥義を使うことにした。
「勝った方から話す!!それでいい!?」
「う、うん!わかった!」
彼も手を出してくる。
「「最初はグー!ジャンケーン!!」」
お互いにグーだった。
「「あいこで」」
またしてもお互いにグー
「「あいこで」」
次はお互いにパー
※以下略
「えっと。とりあえず私が勝ったということで話をします。私は人と変わっているところ…。まあ、周りにそう認知されてるけど。昔からそういうところがあって。それの一つがこの…夢ノートの内容です。」
私は机の真ん中に置かれているノートを手に取る。
「夢ノート…」
彼は何か納得した様子でみつめる。まあ、ノートにそう書いてないし。妄想ノートか夢ノート、願望ノートとか結構痛いノートだと思える内容だ。
「私が見る夢は大体似たことが現実で起こるの。でも、例外はいくつかあって。その一つがとっても稀だけどある人との夢。」
私は夢ノートのページを適当に開いて彼に見せる。
「大体の内容は見た?」
彼はこくんと頷く。
「うん。見てて面白かったからいつの間にかつい…。あ、でも他の人には見せてないよ。」
それは知ってる。聞いたから。私は彼にそのまま話を続けことにした。
「ここにある。《あの夢》っていうのが私が十歳になるまえに見始めた夢。私は黒髪の女性、雪って名付けたんだけど、その人が私なの。そしてその女性の思い人の蒼。雪の知り合いの、女性は茜。で、多分その人の思い人は圭。っていう風に名付けたの。」
私は彼の様子を伺う。話にはついてこれそうだ。
「雪はいつも一人でいるんだけどそんな時蒼はいつも彼女の元を訪れるの。それで彼は近づいた後には必ずどこかへ消えていなくなるの。そして夢から覚める前に必ず近い大きな月を見上げるの。」
彼は私を見て不思議な顔をする。
「…で、このノートはそのことのメモ?」
「…そんな感じです。」
彼はまじまじとノートの内容をみつめる。
「…えっとね。僕もこのノートの内容を読んで気になってたんだ。月の大きさってどのくらいに見える?」
私は気になっていなかった話題を聞いてびっくりする。
「…えっと。大きいっていっても大したほどじゃないよ?今の月がこのくらいの円だとしたら、私が夢で見た月はこのぐらい…かな。これがどうかしたの?」
「えっとね。昔の地球と月の距離は今よりもう少し近かったんだ。十億年前なんて今の月より十パーセント大きく見えていたという説もあるし。脳がその物体を見た印象とかで脚色があるかもしれないけど。」
私はすらすら喋り出す彼を見てびっくりした。理系の人の考えはすごい。
「えっと。つまり…?」
彼は考えるのをやめて私を見る。
「夢の他の印象は?」
「えっと…。妙に現実味があるの。夢の中では草の匂いとかも感じるし。そこにある建物も懐かしさを覚える…かな。」
彼は私の話を聞いて話を切り出す。
「前世…とかって信じてる?」
「…やっぱりそう思う?でも、前世って…厨二病すぎない?」
少なくともこのノートを作る時点でアウトだが。
「うん。前世。可能性はあるんじゃないかな。僕将来の夢は時間学を学ぶことなんだ。」
私はその言葉を聞いて驚く。ちょっと意外だった。理工学とかを習いそうなのに…。
「それで、時間学とは少し違うけど前世とかにも興味はあるんだ。もし証明されたらすごいなって思ってたし。」
私は彼の顔が輝き出したことを見ていた。
「柚木君は私の夢のこと…笑わないの?」
彼はこくんと頷く。私の考えすぎだったようだ。
「…よ、よかった。」
彼は私の方を見てさらに言葉を続ける。
「あと、僕はこのノートにある君が見た風景を元に時代特定とか行ってみたいって思うんだけどどうかな?部活の活動で名目上は昔の生活を調べるって名目で。」
私は考えもしなかったアイデアに心が踊る。前々から個人でそういうことは考えていたものの、いざ調べようと思ったら手をつけられずにいた。
「すごい!私調べたい!」
彼は頷き返しドアの方へ近づく。
ガラッ
「うおっ!?」
どさどさっと二人が雪崩れ込んできた。
「え?朔…に、司馬君?」
二人は笑いながら立ち上がる。
「いやー…。なんか入りにくい状況だったから…。」
「それよりも、夢のこと、話したんだね。」
「うん。私のノート、英表のやつと間違えて持ってきてたみたいで…。それより、いつからいたの?」
「…えっと。僕は結構前から。だから全部知ってます。」
司馬君は頰をかきながらそうこたえる。
「僕は月の話あたりかな。面白いことになってるなって…。」
朔は笑いながらノートを見ている。
「…まあ、もう粗方理解してるよね。」
「まあね。それより、部の方針は決まったみたいだね。昔のある時代の生活について。もしかしたら今後の夢ではさらにキーワードが出てくるかもしれないし。」
私は朔をみる。
「えっ。でもいいの?そんな内容で。前のようにすごい内容とかの方が…」
「いいんだよ。それに昔の生活を調べれば僕の夢も解ける気がするんだ。」
すると柚木君は朔を見る。
「え?白石君も何か不思議な夢を見るの?」
「うん。僕は火だよ。燃え上がる火をずっと見てるんだ。」
「不思議な夢だね。」
私もそう思う。朔の夢は何処か変わっている。私もそうではあるけど。
「面白いことになってきたね!」
事の顛末を見ていた司馬君はそういう。そして笑って朔に向き直る。
「僕、この部活に入る!いい?白石?」
「ああ。大歓迎だよ。よろしくね。」
私も頷いて彼を見る。
「っと。他のメンバーがそういえば見当たらないね。」
朔はそれを聞いてこたえる。
「なんでも運動会の練習で上の体育館とグラウンドで練習しているらしい。」
そういえば一年はソーラン節、二年は組体操…だっけ。あと、一ヶ月だもんね。
「それじゃあ、決まり!まずは夢の時代特定だね。この絵から探していってみようか。」
「それがいいね。とりあえずコピーしておこうか。夢ノートが人に見られたら恥ずかしいだろうし。学校に持ってこないようした方がいいね。」
夢ノートを持って司馬君は部屋を出て行こうとする。私はそんな司馬君に対して怒るも彼の背中を見つめていた。

