私の久しぶりの登校は変わらない朝だった。けど、体が重い。
ー信じられない…。
疑いは晴れた。それは、良いことだが、無実なのに疑われたのだ。怒りがおさまらない。それに、これからの人間関係に影響が大きく出るだろう。それを考慮した上でも残りわずかの高校生活にどれほどの支障が出るのだろうか。
ー歴研部の皆が、助けてくれたのは有り難い。けど、あの時の教室での二人の態度!!
視線で心配とかそんなのしてくれても良いと思う。
ーそれに、犯人はあの子とは思わなかった。
確かに昔から敵視されてたし、髪も切られた。(枝毛があったので美容院に行こうかなとか考えていたのであまり気にしなかったが)じわじわといじめてくる朔ファンよりも直情的でわかりやすいので、そこら辺が抜けてる私にとってはこの方が有り難い。よくは、ないが。
ーだからか、とても不思議なんだよね。
手の込んだことをした彼女の行動に少し違和感がある。
「まあ、大学進学を考えてるんだから、休むわけにはいかない!」
私は自身を奮い立たせて、家を後にすることにした。
私は教室の前で仁王立ちになる。十分前から入ろうとはするのだが、後ろから人が来るとついつい隠れてしまうのだ。
ー根性なし…。
私はため息をつきながらまた教室を見つめる。どうせなら、思い切って開けて驚かせよう。それで、普段通りに振舞って過ごそう。私は片手でドアに手をかける。
スパーーーーーン
ー………やり過ぎた。
クラスの全員が喋るのをやめて私を見る。今の私はテレビであるヤンキーが入って来て皆がびびる。という感じになってしまった。私はしまったー!という嘆きを上げないように堪えて席に向かう。そこには新しい机と椅子が用意されていた。(さすがに学校側が気を使ったのだろう。)私は鞄を横にかけて席に座る。すると、目の前に朔が立っていた。
「ごめん。」
朔はそういうと深々と頭を下げた。というか、土下座をした。私とクラスの皆が驚く。
「え、さ、朔?あの、もういいから!ていうか、立って!ね?」
というか、土下座を頼んでもないのにするとは思わなかった。
「叩いていいよ。」
「…は?」
「ていうか、叩かれないと気がすまない。」
私は特に朔を叩く理由がない。信じてくれていたのだから。しかし、朔は真剣だ。
「わかった。」
私は朔に向かってチョップをした。…無論、手加減なしで。朔より力がないとはいえ、お互いに痛い。二人して痛さでうずくまる。
「………いったー…。」
「……手加減しないんだ。」
朔は少し目が潤ってる。どうやら、やり過ぎたらしい。
「…見舞いにも気遣いにも来なかったから。」
朔は謝罪の顔をして、いつものように笑ってくれた。その優しさと心地よさに私は朔に抱きついた。
「…というわけで、駅前のいちごスペシャルデラックスパフェ奢ってもらうから。」
「…了解です。けど、あの量を食べたら太るよ?」
「歴研部の皆と食べる。なので、あれ二つね。」
「あのー。それ、かなり高い値段になるんですけど。」
そう言いながら朔は頭を優しく叩いてくれる。私は少し涙が出た。
「ねえ。」
私が後ろを振り向くと、そこには冬がいた。
「ごめんなさい。」
すると、又もや冬まで土下座をした。次第に次々と皆が謝罪を口にして土下座をしていく。いつのまにか全員が土下座をしていた。
「俺もぶってくれ!!」
田村君の大声が聞こえる。すると、他の私に対して悪口を言ってた人が口々に同じことを言い始める。
「え、えっとー。」
「え、うわ。何これ!?」
すると、ちょうど登校して来た司馬君が驚きの声を上げた。しかし、私を見た瞬間、理解したらしく、彼までもが土下座を始めた。
「………ぷっ。あはは!」
私はあまりのおかしさに我慢できず、つい笑ってしまった。すると、朔も冬も辺りを見回して、笑い始める。結局、皆が照れ臭そうに笑った。
ー良かった。
私は近くで笑っている朔を見つめる。恐らく、朔のことだから、こうなることを予想していたのだろう。
ー私の幼なじみは本当に頭が回るな。
私はそう思っていると、先生が来て驚いたので席に着くことにした。

