私は花を見つめる。

ーきれい。

青い花は風で揺れ動く。

ー欲しいわ。けど、花がかわいそうね。

私は伸ばそうとする手を引っ込める。

「ーーーっ!」

蒼が私を呼んでいるようだ。私は駆け寄ろうとする。

ーねえ、みて、あの花綺麗じゃない?

「ーー。」

蒼はなにやら説明しているようだ。

私は聞こえなかった。

「ーっ。」

蒼はまた私を置いていく。

ーまって。

私はおいかけようとしながら前をみる。

今日も美しい月があった。










「これより、運動会を開催します。選手宣誓。」
生徒が次々と走ってくる。各組の団長だ。

「「「「宣誓!!!」」」」

私はその様子を見つめる。朔は手を挙げていた。

ー元気になってよかった。

私は安堵しながら見つめる。どうやら色々とこじらせていたようだ。

『色々とごめんね。次からは器用つけるね。』
私はその笑顔を見てなんとも言えず、許すことにした。

団長は次々と宣誓をする。そこには柚木君もいた。

ーあ、柚木君。

柚木君も声高らかに言っている。その後ろの旗手、田村は青組にちょっかいをだしていた。

「…田村…。空気読みなよ…。」
冬ちゃんはため息をつく。保護者席の何人かもそれを見て笑っていた。
「田村君らしいよね。」
私は微笑ましい光景を見て笑っていた。


「あ、いた!伊澤!」
私はテントの下で私を呼ぶ人物をみた。
「あっ!もしかして係?」
「そうそう。今から係で暇な人は手伝って欲しいって。大玉とか。」
それぐらいならできそうだ。
「了解!」
私は冬ちゃんに手を振ってその場を後にした。

どの組みも接戦だった。しかし、赤組が勢いがある状態が続く。それに続いて青組、黄組、白組は団子状態だった。

「すごいね。こんなことになるとは。」
「へへっ。独走し続けるぞ。」
彼は持っていた箱を置いて、ハチマキをみせてくる。どうやら赤組のようだ。

「負けないもん!白組さいきょー!頑張れー!一年ー!」
「こっちのセリフだ!きばってけー!赤組ー!」
私と彼は競うように応援し続ける。
『次は障害物借り物競争です。選手の皆さんは入場門に集まってください。』
私はそのアナウンスを聞いた。
「あ、私、いくね。じゃっ。」
「おう!二位なら許してやる!」
「一位取ってやる!」
私は入場門に向かった。

「…あ、光!おつかれ!」
「冬ちゃん!…あー。なんかドキドキする…!」
「いい?狙うはチョコパン!私達はあれを狙うのよ。」
「…そこ?」
やはりライオンの着ぐるみはある。それに私は怯える。

ー本物じゃないのに妙にリアルすぎる!?

私は冬ちゃんの後に続いて入場する。


「こらー!野川ー!パン選んでんじゃねー!!」
田村は笑いながらさけんでる。…確かに悩んでる。普通、白組の皆は怒るだろう。しかし、笑いしか起こらなかった。

ーまさか、幼稚園児の服って…。

私は苦笑いした。彼女は背が低い。その為かその格好があまりにも似合う。

「だってー!チョコパンがないんだもん!!」
そう叫ぶ冬ちゃんも冬ちゃんだが。
スタッフの人はパンの箱からチョコパンを探している。

「冬ちゃん…笑」
私は先生からカメラを借りて写真を撮った。


冬ちゃんが犬とゴールした。借り物はどうやら犬らしい。チワワは可愛く冬ちゃんはゴールした後飼い主に返しにいった。

ー警戒心の強いチワワが他人になつくなんて!!冬ちゃんすごい!

私はこれまで以上に尊敬した。

「では、次の選手ー!よーいっ…。」

私は構える。

「スタートッ!」

麻袋のところまで走り、そして私は麻袋に体を突っ込みウサギ跳びをする。一定の距離を跳んだあとは風船をお尻で割る。今の所私は足のせいもあって最下位。

ーきた!コスプレくじ!ましなの当たれっー!!

私はくじに手を突っ込み、ボールをとる。

《不思議の国のアリス》

私はガッツポーズをしそうになる。

ーライオン外れた!

私は衣装着替え箱に移動する。アリスのドレスは少しフリフリして恥ずかしかったがライオンよりはましだった。

ダンボールの箱を開けて私は走る。パンはどれでもよかったので適当にジャムパンにした。そして、借り物のくじを引く。一、二人は私よりも時間がかかったのだろう。殿様の格好とメイドの格好をしている。

私の借りるものは…!
《変な人》

私はなんとも言えない気分を味わった。こんなにも悩むものを出されるとは思わなかった。

ー変な人、絶対この中にいるはず。

私はあたりをみる。生徒会やその関係者が絶対にくじのお題にあったテーマを準備している。

ー 他の組もかなり苦戦している。一体どんだけ変なの入れたの生徒会?!

きっと朔がいないすきにハチャメチャなことをしたのだろう。私は頭を抱えそうになる。朔には何としてもこの学校の治安を守ってもらわねばならない。


チョンチョンッ。

「…え?」
私は肩を叩いてきた人物をみる。

ライオンだった。


「ひぅぁっ!!」
私は叫びそうになる。ここまで近づいてみたことがなかった。私は心臓がドキドキした。

ーっていうか、ひいてしまったのね!そのクジ!!


私は哀れな目で見た。すると、その人物は紙をみせてくる。

ーというか、下半身王子様のコスプレって…この人、どんだけ運ないの。

私は紙を覗く。

《不思議ちゃん》

「なるほど!私が不思議の国のアリスだから!」
ライオンは首をふる。石をひろって頭をおさえながら地面に何やら書き始める。

《君は素で不思議だから。》

私はライオンの頭にチョップした。

ーしかし、こちらにとっても好都合だ。

私も紙を見せる。すると、ライオンの人はショックを受けたようにへこんでいる。

「…。とりあえずゴール行こうか。」
私はライオンと走る。しかし、足が痛む。どうやら麻袋でのことで負荷があったみたいだ。

ライオンは私の脇に手をのばし支えようとしてくれる。

「あっ、ありがとう。」
私達はお互いに支え合った。スタッフの人は笑いながら有効だと判断した。その後二人でゴールしたとき、何故かライオンは走って行き、変な人に化けてるのであろうヒゲと禿頭、そしてプリマドンナの格好をした生徒会長を叩いていた。

ー結局、誰なんだろう。

私は気になりはしたが尊厳に関わるであろうから触れることはしなかった。



「いやー!最高だったな!がははっ!」
体育担当、鉄人先生は私の隣に座っていた。騎馬戦は、私は参加することが出来ないのだ。私は皆をみる。冬ちゃんは相変わらずだが。
「おっ。早速はじまったな。」
最初は赤組と黄組だった。
「転入生なかなかやるな。武道でもやってたのか?柔道部にほしいな。」
「絶対にあげませんから。」
私は念を推してそう告げる。確かに彼は相手の力を流している。
「こい!転入生っ!」
田村は悪者が言うようなセリフを吐き捨てる。どうやらかなり燃えてるようだ。二人の帽子の取り合いは続く。

ピーッ

「えっ。」

私は驚いた。いつの間にか田村は後ろにいた青組に帽子を取られていた。

「…やられたー!」
田村はそう言うと騎馬を解いて走る。
鉄人も驚いたようで彼をみる。
「…ほ」
「あげません」
私は念をさらに込めた。

次の試合は青組と白組だった。
「…っ!」
私は朔をみる。騎馬戦のことは先生からも不参加の提案があった。しかし、朔は頑として参加をのぞんだ。

朔は動きにブレがあるが帽子を相手から取り上げた。
「やるな、白石も。」
鉄人は笑った。そうこうしているうちに一騎打ちの形になった。私はハラハラと見つめる。

ー相手は…柚木君!?

私は驚いた。彼は組団長だから乗っているのは当然だが残っているとは思わなかった。
二人は組合を始める。どちらも引く様子はない。しかし、朔の騎馬がぐらついた。柚木君は朔の帽子を取ろうとする。けれどもその手は届くことなく朔が柚木君の帽子を取っていた。

ー朔、すごい。

私は密かに関心した。



そして三位決定戦、赤組と青組は接戦するも柚木君が帽子をとりあげて決着がついた。田村君は悔しそうだったが笑っていた。

続く決勝戦、私は朔を見つめる。相手は先生もほめていた司馬君。簡単に帽子を取れるものではない。二人の攻防は熱く仲間が彼らの戦いに参加できないでいた。そのためか周りで隙をつこうとしては防ぎを繰り返す。
結局さっきと同じように大将のみが残った。私は見守った。二人は帽子を掴み合い帽子を空へ投げた。

ー同時!?

観客もざわざわと話し始める。私は審判をみる。

「勝者……、白組!」

その声を聞いて白組陣からは歓声が上がった。



その後、女子は青組、黄組、白組、赤組と、まさかの王者赤組が四位を取る結果となった。騎馬戦は得点が高い。これにより大きく順位を変動した。

「やったね!朔っ!すごい!」
私は彼に駆け寄る。しかし、朔は元気がない様子だった。
「…うん。ありがとう。」
朔は私の頭をポンポンと叩いた後、どこかへ行ってしまった。

「…朔?」

私はその背中を見つめた。