私は木に登る。木はぐにゃぐにゃしてて幼い私でもいとも簡単に登れた。

「えいっ!」

私は朔の窓の近くにお花を置く。

すると誰かが窓を開ける。

「あれ?光ちゃんどうしたの?あ、危ないよ!また登って…!」

「朔ちゃん!お熱はいいの?」

朔ちゃんは身体が弱い。特に五月は特に。

「僕は平気。それより、こっちにおいで!ここ二階なんだから!」

そういって彼は手をのばす。彼の手は震えていた。熱はまだ下がっていないのだろう。

「へーき!降りれる。じゃ、また明日ね!」

私は慣れた動きで降りていく。もうすぐ地面だ。そう思って飛び降りる。

「あれ?」

しかし、地面の感触はない。私は泣きそうな朔の顔を見た。

ー泣かないで。朔…。

私は朔を見つめる。


『ーー泣かないで。あなたは悪くないの。私のせいなのよ。全てーー』

どこからか凛っとした声が聞こえる。

『お願い。だからー』

私は湖に沈んでいた。身体が動かない。


ー朔、笑って。




私はそう願い目をつむった。






「それでは、今から生活委員の仕事を始めます。今回の運動会での役割ですがー」
私ははっとして前を向く。二年の生活委員長が言葉を続ける。生活委員は今回準備を任されている。私の相方は同じクラスの三河君だ。
「どうする?」
私は彼に聞く。同じクラスの委員二人でやることになっている。
「んー。俺、リレーはでるし。…障害物のやつは?」
「あ、ごめん。それ、私でるの!」
「まじで!?じゃあ、あのライオン引いてくれ!」
「い、や、で、す!」
私は力を込めていった。
「じゃあ、他のにするか。あとは、…」
話し合いの結果私達は二人三脚の係をすることになった。




「じゃ。また今度打ち合わせな!」
「うん。またね!」
私は教室で荷物を探す。

ーあれ?鞄がない?私は鞄があるであろう場所を手探りで探す。…見つからない。

「うそっ!どこ?」
私は教室を見渡す。…鞄はなかった。

教室をでて私は走る。廊下にもない。

「どうしよう…。」

私は手当たり次第に探すことにした。


ーー司馬sideーー
「ありがとう。司馬君。荷物持ってくれて。」

「別に。気にしないでいいよ。にしても、運がないね。帰るところだったんでしょ?先生に声かけられるなんて。」
「あはは。まあ、慣れてるから。」
桃瀬さんと僕は授業で使ったのであろう荷物を持って歩いていた。桃瀬さんは鞄を片手で持ち、重そうにしていたので手伝うことにしたのだ。
「あ、この教室!ありがとうね。」
桃瀬さんはドアを開ける。
「この前学校を案内してくれたお礼だよ。」
白石たちに頼んでいたのだがその日の放課後、桃瀬さんは声をかけてきて流れで案内してくれることになった。

「…あっ。」
桃瀬さんは何かあったようでそのまま黙り込む。
「?どうかしたの?」
桃瀬さんはこちらを見た。
「あそこに伊澤さんがいるなって…」
伊澤さんは慌てた様子で走っている。
「本当だね。どうしたんだろう?」
「…やっぱり、彼のことかな?」
「彼?」
僕は聞き返した。
「ほら、彼女ととても仲がいい白石君。彼を探してるのかなって。」
僕は納得する。確かに金曜日だったか、彼と彼女は一緒に学校に来てた。
「噂ではね、お互いに両思いなんじゃないかって言われてるんだよ!」
僕は驚いた。彼女は確かに白石をとても頼りにしていた。

ー確かに、普通はそうだろうな。

「私の見解だとね、お互いに言い出せないんじゃないかなって思ってるんだ。」
「そうだね。長く一緒にいたら…」
彼女はそのままどこかへ走っていった。

ズキッ

ー胸が痛む。

「…。お互いに早く思いに気がつけたらいいのに…。あ、そうだ!」
「えっ?」
桃瀬さんは振り返ってさも良い案だと言わんばかりに言い放つ。
「私達で伊澤さんと白石君の応援しない!?」
僕は桃瀬さんを見てびっくりする。

ズキッ

また、心臓が痛む。


ーけど、これが一番いいんだ。


僕は痛む胸を押さえながら彼女に笑顔で応える。




「いいよ!僕も協力するね!」

僕は赤く染まる教室で、彼女を見ていった。