運転席の窓が開き
速水先生に『乗って』と言われたので、助手席に乗り込んだ。


昨夜と同様
またあの甘い芳香剤の
落ち着く香り。



「暑かったり寒かったりはしないか?」


「大丈夫です」



出発してからすぐ
先生は些細な事にも気にしてくれる。



「具合悪くなったら言えよ?」


「はい」



優しくって
ドキドキしてるよ、あたし…。

でも気付かれたくなくて
スッピン見られたくなくて
ずっと窓の外を眺めてしまう。




だけど、それ以上
何を話したらいいかわからず
無言になる…。




気まずい…。


車内で2人きり。
沈黙はキツい。




だがしかし
そんなあたしに気付いてか
先生は正面を向いたまま
運転しながら話掛けてきた。



「大学って家の近く?」



顔を見られない様
あまり運転席を見ず
返事をした。



「いえ…病院の方が近いです」


「なのに、なぜわざわざこっちの病院まで来てるんだ?」


「…通い慣れてる方が安心するから」



それに学校帰りにも寄れるし
あまり困ってはない。



「そっか…。学校から遠い場所に住んでんのも、何か理由があるのか?」