My.doctor…?

小さくだったけど
確かに聞こえた白石さんの言葉。




あたしに背を向けたまま
彼女は続ける。



「来てくれたのは…ちょっと嬉しかった」



言い方はぎこちなかったけど
言いたい事はしっかり伝わった。




また歩き出す彼女の後ろ姿に
あたしは頭を下げて見送った。



結局何も言えなかったけど
最後に会えたから…
これで全て終わったんだと思う。




白石さん…
あたしが先生を好きだって気付けたのは、あなたのおかげなんです。


こんな縁だったけど
心から感謝しています。

そして
あたしもまた
あなたの幸せを願っています。


本当にありがとうございました。



さようなら…。






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―――――
―――――――……



少しホッとしながら
マンションに帰宅。




扉の前に来るまで
全く忘れていた。



「鍵…ない」



初め『どこかに落とした?』
とも考えた。

けれど。
冷静に記憶を辿って思い出す。



「…部屋の中だ」



急いで飛び出してきたため
鍵の存在とオートロックの事を忘れていた。


スペアキーもない。


よって
部屋に入れない訳だ。