そんな事を言われて
『イヤ』だなんて
言える訳がない。



結局

先生と一緒にマンションに戻る事になってしまった。




病院からマンションまで
距離なんてほとんどないけれど
先生は車で送ってくれた。



きっと
雨が先ほどよりも
激しさを増していたから。




あいかわらず車内は無言。


そんな中
たいして雨に濡れていないと思っていた体は、徐々に冷え始めていた。




マンションに到着し
また戻ってきてしまった事に
情けなさを感じる。


覚悟して出ていったのに…
1日も経たずに
もう戻ってきてしまったんだから。


すぐ出ていかないとな…。

今度こそちゃんと…。


じゃなきゃ
『そばにいたい』と
伝えてしまいそうで…怖い。



「風呂沸かしてくるから、少し待ってて」



そう言いながら
バスタオルを手渡してくれた。


先生が出ていったリビングで
借りたバスタオルで体を包む。



洗剤の香りが仄かにする。

同時に
ここでしばらくの間
洗濯していた事を思い出す。



居候の身だったけど
今思えば
"同棲"が幸せだった。



先生の患者で良かった…と
思ってしまうぐらい。




あたしの"帰る場所"…




戻ってきたい。