柚花の口から出た衝撃的な言葉に俺は固まった。



前の夫…だと?



それって
コイツの手紙にあった
両親が決めた"許嫁"とやらか?


家庭内暴力…

俺は真っ先にDVを疑った。



「普段はそんな人じゃないんだけど、お酒を飲むと、まるで人が変わったみたいに手を挙げるの…」


「それで離婚を…?」


「…うん。この事、翔灯なら…信じてくれるよね?」


「…あぁ」



あれだけの傷を見たんだ。
信じるしかないだろ。



ただ…その傷に
なんとなく違和感があった。

どう言えばいいのか。
あるべき所に、ない"何か…"に
俺は気になっていた。



「変なもの見せてゴメンね?…あと、急に押し掛けたのも…」



ワンピースのファスナーを自分で閉めながら、俺の方を見ずに謝る柚花。



「そんな事より、お前…これからどうするんだ?」


「わからないけど…今日はとりあえず、どっかのホテルに泊まる。翔灯に迷惑が掛かるし…」


「ホテルって…帰らなくていいのか?相手の方や家族とは、ちゃんと話し合いはしたのか?」


「翔灯が…助けてくれるなら、それでいい」



またも俺の質問には答えず
彼女はそう答えた。