「…悪かったよ」


『え…?』


「椿がそんな風に思っていた事は知らなかったから…」


『翔灯…。いいのよ。ちゃんと気持ちがわかったんだもの。あたしは幸せな姉よ』



電話越しから伝わる椿の声…

姉はきっと今
今まで見る事が出来なかった
優しい笑顔をしてる様に思えた。



『ねぇ翔灯?』


「なんだ?」


『柚花さんの事なんだけど…』



またかよ。
どうしてそう
アイツの話題をしたがるんだ?



「だから俺は、、」


『実家に来たのよ』


「…え?」



なんだ…どういう事だ?



「来たって…」


『"翔灯に悪い事してしまって、ごめんなさい"って、謝りに来たのよ』



椿が言うには
俺の家を出たその足で実家に寄ったら、偶然にもアイツが先にいたらしい…。



『何かあったのかしらね…。元気がなかったわ』


「…俺には関係ないから」


『そんな事言わないの。翔灯にも逢いたがってたし、話を聞くくらい…いいんじゃない?』


「そういう訳にはいかない」



俺達はもう
そういう関係じゃないんだよ。

赤の他人。
もう終わったんだ。
だから…逢う事もない。



――……速水side END *。+†*