俺が咲桜ちゃんの
(今だけだが)彼氏だって覚えてて言ってるのか?


喧嘩っ早いヤツなら
とっくに殴ってるぞ。

あいにく俺は
痛い事をするのは好きじゃない。

黙らせるなら
強めの全身麻酔でも
注射してやる。
(犯罪ですからやめましょう)



「普通に恋愛しろ。怖がらせず、相手の気持ちを考える。手紙やら花束じゃなくて、しっかり自分の口で話せ」


「アンタに何がわかる…僕に…指図するなッッ!!」



半ば甲高い怒声をあげ
持っていたショルダーバッグから何やら取り出し始めた。


野郎が手にしたのは
小型のナイフ。

大抵こういう男は
口で言って反論された場合
最終手段でナイフを取り出す。

…と、聞いていた。



「物騒なものを持つな。自分の為にも、これ以上、罪を重ねない方がいいと思うぞ?」


「うるさいッ!黙れッッ」



刃先を俺に向け
両手でブンブンと振り回す男の手は、小刻みに震えていた。


ナイフで脅すなんて慣れてないんだろ。
本人が1番怖いんだと思う。

まったく本当に…
色々と厄介な男だ。



「落ち着けって。な?」