「悪かった。もういい…何も言うな…」


「なにも…大丈夫…平気…こ、わくな…い」


「咲桜ちゃんッ!」



言うな
言わないでくれ



思わず大きな声で呼んだからか
咲桜ちゃんは驚き俺を見るが
絶えず、ずっと…彼女の目から涙が溢れていた。


その涙に
俺は後悔した。


『思い出させるんじゃなかった』と…。






抱き締めてやりたかった。


だが…
今ここでそれをすれば
俺も咲桜ちゃんを襲った男と
同じになる。

また怖がらせてしまう。


さっきの1回が
俺にとっても彼女にとっても
精一杯だ…。



情けないが
遠くから咲桜ちゃんを見守るしか出来ない。




それに今は
そっとしといた方がいい。



「悪かった…。もう…考えるな。今はゆっくり休むんだ…」



『何かあったら遠慮せずに呼べ』そう続けて
俺は部屋を出て行く…。







焦っても
彼女を怖がらせては意味がないのに、俺は何をしてるんだ。



しっかり落ち着いたら
今後の事を考えよう。


だけど…
許せなかった。


こんな事した野郎が。


どんな理由にしろ
女の子に…
咲桜ちゃんに手を出しやがって
許せる訳がない。




――……速水side END *。+†*