「…んせ」



少しだけ意識を取り戻した咲桜ちゃんは、うっすらと目を開けた。



「咲桜ちゃんッ」


「よ、かっ……せ、んせ…だ」



なんて言ってるのか聞き取れなかったが、ちゃんと彼女の声を聞く事が出来た。


そしてその声が
俺を正気に戻した。




『落ち着けよ

俺は医者なんだ。
叫んでる時間があるなら
彼女を助けろッ

俺が落ち着かなきゃ
彼女はもっと不安なんだ』



頭の中を医者モードにし
俺は冷静さを取り戻す。



「咲桜ちゃん、もう大丈夫だからな?」



彼女は小さく頷くと
ゆっくりと目を閉じ
スーッと肩の力が抜けた。



じんわりと額から汗が滲み
唇が少し紫色に変色している。



『とにかく横にしないと』と
彼女の膝の下に手を入れ持ち上げベッドに運んだ。


そこでふと気になった。






どうして彼女は
服を握りしめているんだ?





気を失っているはずなのに
胸とお腹辺りの服を
ギュッと力強く握っている。



苦しいのか?