しばらくすると、秋奈が呟いた。


「愛してる」


瞬間、こみ上げる喜びで笑みが抑えられなくなった。


「僕もだよ」


僕はすぐに答える。


あの秋奈が、ここまで自分に好意を寄せてくれるようになったという事実に胸が高鳴る。"愛してる"、先生の自室で溢れるほど浮かんでいた文字が脳裏を過ぎった。先生と同じ言葉だ。"好き"ではなく"愛してる"、それでこそ意味があるのだ。柏木秋奈は、先生に似ている。やはり、僕の目に狂いはなかった。


しかし、あの時のように簡単に崩れ落ちるような脆い関係は望んでいない。出来るだけ慎重に。そうすれば、きっと上手くいく。


秋奈も、同じことを思ってくれているはずだ。何より、彼女は頭がいい。


秋奈が薄らと微笑む。


それを見て、僕も同じように笑い返した。