体育館裏。草木も伸び放題な人気のないそんな場所で、私は傷だらけの身なりで泣き崩れていた。


「あはは!」


周りの女子たちは笑う。苦しんでいる様を見て楽しんでいる。

リーダーの女が、私の長い髪を掴み、持ち上げる。頭からぶらりと垂れ下がるような扱いを受けながらも、私は「ごめんなさい」と許しを乞うていた。

目の前には、あらかじめ用意されていたであろう、泥や虫が混ざった水バケツが置かれている。それを見てリーダーの女が言った。


「飲め」


髪の毛を掴まれたまま、ズルズルと引っ張られていく。頭皮の痛みを抑制しようと、私もまた引っ張られる方向へと足で地を蹴る。そして無理やり、バケツの中に顔を突っ込まされるのだ。


────苦しい。気持ち悪い。怖い。助けて。


私の願いは彼女たちの笑い声にかき消され、誰にも届かない。

時々、呼吸のためにバケツから顔を出させてもらえる。しかし何秒と経たないうちにまた入水させられる。息も絶え絶えになりながら、私は必死にもがく。死にたくない。

聞こえないことも承知で、バケツの中で呟いた。


「助けて」


そこで、映像はプツリと途絶えた。


目を覚ますと、私は自分のベットの中にいた。外では小鳥がちゅんちゅんと可愛らしい鳴き声を奏でている。カーテンの隙間から、柔らかい日差しが差し込んでいた。

朝だ。

どうやら、懐かしい夢を見ていたようだった。
高校一年生の頃、私はある女生徒たちからいじめを受けていた。さっきの夢は、その時の一部だ。

今はもう事も落ち着いて、私はなんとか平穏に学校生活を送っている。なぜなら、彼女たちは今、停学処分を受けているからだ。私が学校側に申し出た訳ではないが、もともと見て見ぬ振りをしていたクラスメイトたちだ。事が重大になるのも時間の問題だっただろう。中には既に転校してしまった女生徒もいるが、自業自得だ。─────ざまぁみろ。彼女たちを思い出す事に、心のうちで思うのだ。


ベッドから降りて、制服に着替える。
朝食を取るためリビングへ向かうと、いつものように机上にあるメモに目を通した。