その後、人通りが少なそうな路地まで走り抜けて、手中に収めていた地図を開く。
地図から察するに、今自分がいる路地からそう遠くない場所に目的地はあるが、"十八時が過ぎたら来い"ということはそれより早く着きすぎてもだめだということなのだろう。スマートフォンを取り出して時刻を確認するが、十八時まであと四十五分程度残っていた。
こんなとき、大好きな本でもあればあっという間なのだろうが、生憎読みかけの『月光』は家に置いてきてしまった。もっと言えば、スクールバッグや勉強道具なども家の中だ。唯一手持ちにあるスマートフォンでさえも、いずれはバッテリーが尽きることだろう。
どうやっても、このままでまともに過ごすことができないことは明白だった。
そんな事態に気づき、過去の自分に何度目かわからないため息を吐く。
自宅もここからそう遠くはないため、今から取りに戻ることは可能だ。たが一度は戻りたくはないと思った場所なのだから、そうするにはやはり抵抗がある。帰る、帰らない、という思いを交互に巡らせて短い経路を往復していた。
しかし、そんな風に無駄な時間過ごしていてもあっという間に十八時は近づいてくる。諦めて、周辺で適当に時間を潰すことにした。
下手に歩き回ることは出来ないため、近くにあった塀に背中を預けて、つまらないことばかりを頭に浮かべる。王道に羊を数えてみたり、今まで読んだ本の内容を思い出してみたり。スマートフォンを開いてバッテリーを消費することも出来なかった私は、四十五分間実に無駄な時間を過ごしていた。
そうして、ようやく時刻が十八時を過ぎた頃、目的地に向かって歩き始めた。路地を抜け、住宅路に出る。こんな場所になにがあっただろうかと思い浮かべながら、先生の言う場所を探していた。しかし、どれだけ探してみても目的地らしい場所は見当たらない。どこを見渡しても周りは家ばかりだった。何かビルであったり、施設であったりというものを想像していたのだが、的外れだったのかもしれないという思いに至る。
そうやって周辺を歩き回っていると次第に、先生が目的地とした場所が誰かの家なのだということに気が付いた。
────先生の、家。
そう考えるのが自然だった。
胸の奥がぎゅうっと締め付けられるように苦しくなる。手が汗ばんで、呼吸が荒くなる。事実を知った途端、驚く程緊張し始めたのだ。

