「先生、愛してる」



最後、野宿のあとやっとここへ来たのだと言うことを説明し、私は口を閉じた。


「なるほど、そういうことか」


先生は言った。
それ以上何を言うでもなく、ただ頭から頬にかけて、ゆっくりと撫でてくれていた。


同情や慰めの言葉が、今の自分には一番傷つくものなのだと彼は知っているのだろう。
"辛かったね"や"頑張ったね"、その言葉を聞けばきっと、自分自身が本当に惨めで可哀想な人間なのだと認めざるを得なくなってしまう。


だからこそ、"理解した"という意の言葉だけを、先生は吐き出したのだと思う。


「なんだか、出会った頃を思い出すな。まさかまた同じ状況に出くわすなんて」


先生はくすりと笑って言った。


「もう、先生」


「ごめんごめん」


出会った頃とは、この間夢で見た続きの話をしているのだろう。確かに今思えば、状況はあの時と大して変わらない。


「でも、確かにそうですね」


私がそう言った瞬間、四限目の終了を告げるチャイムが校内に鳴り響いた。共に、昼休み開始の合図でもある。

そうか、今は授業中だったかのかと一気に現実に引き戻された。


「今日はもう、授業に出る気はないんだろ?」


「はい」


先生は席を立つ。
そうして部屋の扉を開けて言った。


「昼休みは、結構生徒が来るんだ。僕はカウンターに出ないといけないから、しばらく席を外すよ。その間ここの扉の鍵は閉めておくから、放課後までいるといい」


「ありがとうございます」


「あ、そうそう」