「先生、愛してる」



男は母の名前を呼び捨てにしている。加えて下着姿ということは、彼は母の愛人で、少し前に共に寝ていた、という事なのだろう。

つまりは、私が毎朝片付けているソファの上の精液はこいつのものだったのかと、一気に腹立たしい気持ちが湧いた。
男が私のことを見つめる。その視線にぞっとして、少し後ずさりした。力強く手を握る。


「へぇ、秋奈ちゃんだっけ?真希とそっくりだなぁ。体の方も良かったりして」


「なによ、私じゃもうだめだっていいたいの?」


目の前で、男と女が体を合わせ始める。
その様子を見て、一層二人に嫌悪感が増した。


「そういえばあんた、家まで男と一緒にいたわよね。もしかして彼氏?もうヤった?」


母が私の方へ顔を向け、奇妙な笑みを浮かべて言った。


「ふざけないで。彼はそんなんじゃない」


私はきっぱりと言った。すると、母は「なんだ」とつまらなさそうにする。
母の隣にいる愛人が、実の娘がいる目の前で母の胸をいやらしい手つきで愛撫し始めた。その行為に母もまんざらでも無さそうで、恍惚そうな笑みを浮かべる。


「ねぇ秋奈、あんたも早く男を作ればいいのよ。こんなに楽しいこと他にはないのに。そしたら、四人で一緒に遊びましょうよ」


────ねぇ?


何の問題もなさそうに母は言った。母親が娘に対して使う言葉とも思えないほど、最低な発言をしている自覚もないのだろう。
こんな奴が自分の母親なのかと呆れて笑うことも出来ずに、私は幻滅しているしかなかった。


母とその愛人は、娘のことなどお構い無しにどんどん行為を進めていく。母の下着は露わになり、きっちり着こなしていたはずのスーツは床にはらりと落ちた。


「どうせなら、秋奈ちゃんもここに混ざる?こんなにノッてきてるんだし」


おいで、と愛人の方が手招きをした。それを聞いて母も、いい考えだと言わんばかりにこちらを見る。そんな二人がどうしようもなく恐ろしくて、私は徐々に彼らから身を引いていく。靴を履き、玄関の扉まで到達すると、そのドアハンドルを握って勢いよく家を飛び出した。