Maybe LOVE【完】



「もうその話はやめよ」
「男が手に触れても嫌がらないし、笑うだけ。でも一線引いて、その先を聞き出せないようにしてる」
「知らない男に触られて嫌な気しない女なんていないでしょ」
「自分のことは聞かれれば話すけど、一線は越えさせない」

何が言いたいのかわからない。でも、この先は聞きたくない。

「意味わかんない」
「男の話を一切しないのは、そういう事だろ?」

そういう事ってどういうこと?
私の何がわかるっていうの。
何が言いたいのかわからないけど、そうやって人の心にズカズカ入ってくる無神経な男は嫌い。イライラする。

帰ろうと腰を浮かせると、案の定、腕を引かれて止められた。

「お前、男のこと信用できないんだろ」

昨日の夜みたいに肩を抱かれて、逃げないように固定される。
思わず視線を逸らしたけど、カオルの手によって、嫌でも向かい合う。
逸らされない視線に、近付いてく顔。

話したくないから話すつもりはない。話さないからってキスされてもヤられても、もう何でもいい。
諦めて体に入れてた力を抜くと、フッと笑われた。

「ほら、そうやって開き直る」

逆に萎えるわ、と肩も手で押さえられていた頬も開放される。

「なんなの」
「あ?」

立ち上がってキッチンに向かうカオルに問いかける。
別に引き止めたつもりじゃないから戻ってこなくていい。
そう言いたいけど、その言葉が出てこない。

「なんだよ?」
「それはこっちのセリフ。何がしたいのよ?ほってりゃいい私をわざわざ家にまで上げて、帰らせればいいのに引き止めて。何がしたいわけ?」

もう振り回されるのは嫌。これ以上何か聞かれるのも嫌。
カオルの言うことは間違ってるけど、外れちゃいないから動揺してしまうし、何も言えなくなる。

“男”の匂いのする部屋も慣れてはきたけど、居心地の悪さは変わらない。
ベッドで寝たことで、カオル自身の匂いが染み付いてとれない。
昨日のタバコの匂いが残っていればまだいいのに、それすら消えてしまってる。
早くこの空間から出たい。
昨日と同じ感覚に襲われる。

タバコに火をつけたカオルはコーヒー片手にまた私の隣に座った。
一つを私に渡すけど、受け取ろうとしない私に溜息吐いて、テーブルの上に置いた。

「お前が何を考えてんのか知らないけど、俺はお前のことが知りたかっただけ」

カオルの言葉に思わす顔を上げる。
何を言ってるんだろう、この男は。

「過去にどんな男と会ったのか知らないけど、俺は会ってすぐヤるような男じゃないし」

お前のご希望に添えなくて悪いな、と笑う。
ご希望に添えなくて、なんて、誰も最初から希望していない。

「頭おかしいわよ」
「だろうな」
「何言ってんの?」
「さぁ?」
「さぁ?って。私の歳は知ってるでしょ?」
「22だろ?俺は32」
「聞いてない」
「そうだな。でも何か関係あるか?」

だからなんだ?という顔で私を見る。

何を言ってるのか理解できていないのは私のほうだ。
自分の言葉もカオルの言葉も上手く理解できない。