いつからこんなにカオルを好きになっていたんだろうって思う。
最初のあたしから考えると想像できない。
付き合ってからもずっとカオルは変わらず優しいし、たまに子供っぽくて、それでも安心する。
カオルの肩に自分の頭を乗せて目を瞑った。
そして、未来もあたしがカオルの隣に立っていられるよう祈った。
「言い方が悪かったか?でもお前、まだ若いだろ?今この時点で結婚を迫られるような歳じゃないし考えなくてもいい歳だろ。未来のことなんて考えずに今を遊べばいい。何年か先、お前が飽きずに俺の隣にいるならそれからでも遅くないだろ」
そう言うカオルはどこまでもあたしを甘やかすらしい。
あたしがこうしてカオルのことを心配して、もしかして隣にいないかもなんて考えてるのにカオルはその時もあたしが隣にいることを考えてる。
この辺がやっぱり歳の差っていうんだろうか。
あたしには想像もつかないところでカオルは色んなことを考えてるんだと思うと、ますます自分が子供であることを思い知らされる。
「なんだ?なんか言えよ」
俯くあたしの頭上から相変わらずな声が落ちてくる。
体を離し、顎を掴み、顔を上げさせられる。
「なんだ、その顔は」
泣きそうな自分がバレて、そんなあたしを見て、笑いを堪えてるカオルがムカつく。
それでも抱きしめてくれるから安心する。
こうやってしてくれないと色んなことから自分の自信が奪われて並んで立っていられなくなる。
「案外、可愛いこと考えるんだな」
笑いながら言うからグーで肩を叩いてやった。
痛かったらしく、ちょっと怒られたけど抱きしめ返すと許してくれて案外簡単だった。
「なんだったら今すぐ結婚してもいいんだぞ?」
「今すぐ?」
「俺はお前が俺のもんならどんな形でもいいんだよ」
「一生独身でも?」
「じゃあ、お前も独身だぞ」
「それはヤダ」
「………」
少しの沈黙。
互いに何も話さなくてずっと抱きしめあってた。
それが心地よかった。
すっと体が離れてカオルがあたしを見つめる。
あたしもカオルを見つめて、その真剣な表情に思わず笑っちゃう。
真剣な表情のカオルは変だ。
変って言ったら失礼かもしれないけど。
「カナ、お前一生俺の傍にいられるか?」
「いれるよ、多分」
「即答だな。多分が付いてたけど」
「カオルが浮気しなかったらね」
「俺が浮気するわけないだろ」
「わかんないじゃん。世の中にはあたしよりイイ女がいっぱいいるんでしょ?」
「いるな」
「カオルこそ約束できる?あたしを一生好きでいるって」
「出来るぞ、多分」
「多分が付いてるけど」
曖昧な言葉での駆け引き。
駆け引きじゃなくて言葉遊びのようなものだけど。



