Maybe LOVE【完】



「10歳も年が離れた女を相手にするなんて、どうかしてる」
「は?ロリコンだとでも?」
「違うわよ」

そういうことを言いたいんじゃない。
それもないわけじゃないけど、そこじゃない。

「私相手に何を言ってるの?」

隣の男を真っ直ぐ見て、はっきり伝える。
理解できてないけど、これだけは言える。

「どうしてそんな目で私を見るのよ」

私はこの男の表情を見ると泣きたくなる。
私が何を言っても優しく笑いかけてくる。むしろ、楽しそうにも見える。
そして、私はこの男に何を言っても何をしても逆らえそうにないことも薄々感じてる。
この男の胸で泣くんじゃないだろうか、という不安までも。

そっと抱きしめられて思わず抵抗する。でも動くたびに抱きしめる腕が強くなって抵抗するのを止めた。

カオルの匂いがする。
“男”の匂いがする。
気持ち悪い。でも、不思議と安心してしまう。
嫌な感覚だ。

「俺は嘘を付かない」
「そんなこと無理でしょ」
「証明するものはないけど、約束する」
「約束なんていらない」

“約束”なんて口約束は守れないに決まってる。
約束なんてあって無いようなもの。
“約束”や“誓い”なんて必要ない。
あったって意味がない。

「お前は男嫌いじゃなくて、男性不信なんだな」

これは厄介だな、と苦笑したけど、「その方がオトしがいがあるな」と笑った。

「私はそう簡単に落ちないわよ」
「どうかな」

くすくす笑うカオルの胸を押して、離れた。

「どっからその自信が湧いてくるのよ」
「どっからだろうな」

くすくす笑うカオルを睨む。だけど、ずっと笑ったまま。

本当にこの男の考えてることはわからない。
初対面の酔った女を家に上げたのに何もしないなんて。
挙句の果てに“お前のことが知りたい”だなんてわけのわからないこと言い出して。

「信用できないなら信用させるまでだ。長期戦だな」
「私は別に、」
「逃げることは許さない。向き合いもせず逃げるのはルール違反だな」

最初からルールも何も設けてないし、参戦するつもりないし。
この男とどうこうなるつもりもない。

「彼氏とかいらない」
「あ?」
「好きとか嫌いとか、どうでもいい」

友達が彼氏とのノロケ話をするのは聞いていて楽しかった。
目の前で二人を見てると幸せそうだな、と思うのは何度もあった。

“私にもいつか、”って何度思ったかわからない。
でも、出会えば友達みたいになることはないし、最低な男ばっかりだった。

だから今まで避けてきたのに。
友達と騒いで積もり積もった寂しさを晴らしていたのに。
それでもどうして寂しさはさらに積もっていくんだろうって思ってた。