すっかり笑顔になった彼女はニコニコしながら、ケーキを頬張りワンホールあったのに美味しいと喜びながら食べている。

「それでね、お父様ったら勝手に婚約の話を持ってきたの」

「えぇ、そりゃ嫌になるね」

とまぁ、なんでも彼女は父親が持ってきた婚約の話に納得出来ず家出してきたらしい。
相手はこの国の王子様だとか。

「でも片思いの相手なんでしょ?」

「・・・でもクラウド様はわたくしのことなんか妹くらいにしか」

そう悲しそうに言うエミリーに何も言えなくなった。
こんな可愛い子に振り向かない男なんかいるのだろうかと甚だ疑問だったが。

「今は可能性が低くても、ずっとそばにいてくれるなら振り向いてもらえるようにがんばれるじゃない」

「サナエ・・・」

「だって充分魅力的だもの、エミリーは。
夫婦になろうとしてるなら、尚更歩み寄れると思うな」

話を聞くには相手からの申し出らしいし、断ろうなら王子様くらいの権力だったら断れる筈だ。
それをわざわざお願いしてくる辺りただの妹だと思っているとは到底思えない。

私はそんな言葉を飲み込んで、彼女を必死に励まし続けた。

こんな可愛い子をいつまでも言葉足らずで不安にさせている王子様に毒づきながら、
私は泣きながらケーキを食べるエミリーの涙を必死に拭っていたのだった。