「———藤崎先輩は瀬名先輩とはただの幼馴染なんですよね。」



「…………え?あ、うん。そうだよ?」
彼女は《ただの》をすごく強調して言ったが、私は心の中で優ちゃんもだけどね、などと思っていたのでそのことは特に気にしていなかった。

「ただの幼馴染がずっと一緒にいるって、おかしくないですか?他の人から見たら独り占めしている感じがします。彼女でもないのに。」
独り、占め?
「あ、あの。私は全くそんなつもりじゃなくて…。斗真とは確かによく一緒にいるけど、それは優ちゃんだって同じだし…。それに、なんでそんなことを言うの?」
すると彼女は顔をしかめて、私を責めるように

「その呼び方ですよ。」

と冷たく言い放った。私がまだなんのことかと考えているうちに
「上島先輩は瀬名って呼んでるじゃないですか。藤崎先輩も、そう言う風に苗字で呼んでみたらどうですかぁ?」
私は何も言えなかった。その呼び方のことは事実だったから。
「そう、だね。うん、これからは、瀬名くん、って呼ぶようにするね。」
「そうですね。それに毎日うろちょろしてたら、相手にも迷惑だろうし、ちょっと距離とったほうがいいですよぉ?」
そう言って彼女は極上の笑みを浮かべた。
「ごめんなさい。もう少し気をつけるね。注意してくれて、ありがとう。」
私はそう言って微笑んでから教室に戻った。

私が教室に戻ると、優ちゃんと斗真が私のところに来て大丈夫?と聞いて来た。驚いた私はとっさに大丈夫、と言ってしまった。
「大丈夫。ちょっと話してただけだから。心配かけてごめんね、優ちゃん。せ、瀬名くんも。」
私がそう言うと、二人は立ち尽くしたまま、自分の席に戻って行く私を見ていた。