そっか。短い相槌を打つと、しんと部屋に沈黙が落ちる。朔が微妙に動く衣擦れの音が、やけに大きく聞こえた。
「ぶっ倒れてる間、不思議な夢を見た」
「夢?」
「普段通りのなんてことない生活の夢なんだけど、お前がいなかった。失踪とかじゃなくて、最初からその世界にはお前は産まれていないみたいだった」
遠くを見るように夢のことを思い出して話す朔の目を見ていて、どきりとした。その夢、私が見ていた夢とそっくりだ。
「楽しかった?」
「いや、むしろ違和感しかなかったね。無駄にお前のこと探し回って、超疲れた。ほっときゃいいのにな。どこかにお前がいるんじゃないかって、探して探して。走り回ってたら、お前を見つけたような気がした」
「へえ……」
「だけど、結局会えなかったんだよ。お前を見つけたと思った瞬間、川に落ちたんだ。あ、俺死んだなと。変だけど、夢の中で覚悟した。そこで目が覚めた」
そうなんだ。朔は私の事を一生懸命探してくれたんだ。私は、朔がいない世界をエンジョイしてたよ。罪悪感でちくりと胸が痛む。
「奇遇だね。私も同じような夢を見たよ」
そう言うと、少し眠そうにしていた朔の目が大きく開いた。珍しく興味深げに私を見る。ぽつぽつと夢の設定を話すと、朔は天井を見上げてうなった。



