「どうした」

「ん?」

「腫れてる? 赤い」


そう言えば。さっき想史に叩かれたことを思い出す。朔は軽い近視だから、きっとよくは見えてないだろう。


「ああ……うん。ちょっとね」

「父さんじゃ、ないよな。誰にやられた」


お父さんは割と私の事を可愛がってくれる。お父さんに叩かれたことは、産まれてから一度もない。朔はそれを知っているから、そう言うんだろう。

まさか想史にひどいことを言って叩かれたなんて白状できない。黙っていると、朔は小さくため息をついた。


「冷やした方がいいんじゃね? つうか親父も母さんもどうして気づかないんだ」


ほんとだ。朔の言う通り。お父さんもお母さんも、私の顔なんて見てないんだ。今それが証明されちゃった。


「はは……いつものことだよ」


今さらショックなんて受けない。しかも今は朔が大変なときだ。普段に輪をかけて私のことなんて見えなくなっても仕方ない。怒りを通り越して笑えてくるわ。


「ただただ虚しい」


ぽろっと本音が零れ落ちた。それを突っ込まれる前にこちらから話題を振る。


「つうか、どうしていきなり倒れたりしたのかな。本当に原因不明なの? 何か心当たりは?」

「あるわけないだろ。俺が一番びっくりしてるよ」