気分は最悪だったけど、家に帰って着替えるとすぐにお父さんが帰ってきた。一緒に病院に向かっている途中、朔が救急病棟から一般病棟に移されたというメールがお父さんの携帯に入った。送ってきたのはもちろんお母さんだ。


「ってことは、峠は越えたってことだよな。危なければ、ICUに入るって言ってたよな」


お父さんは自分に言い聞かせるようにぼそぼそと話す。


「うん。きっとそういうことだね。良かったね」


相槌を打つと、運転席のお父さんの横顔がホッとしたように緩んだ。

病院に着くとお母さんから知らされた病室へ向かう。朔の病室は七階にあった。ノックして入ると、そこにはベッドがひとつ。個室だ。


「朔~。元気か~?」


お父さんがわざとおどけてそんな風に言う。横たわっている朔は酸素マスクが外されていた。点滴は相変わらずされているけど、意識が戻っているだけあって、昨日ほどの悲壮感はない。


「元気じゃないよ。入院してんだから」


そう言いながら弱弱しく笑う朔の手を、すぐそばに座っているお母さんが気持ち悪いほどずっと握っている。


「結局原因は何だったんだ?」

「それがまだわからないのよ。先生たちも異常個所が見つからないから積極的治療ができないとかでね。精神的なものじゃないかって」