この目で見たんだよ。想史が綺麗な、とってもお似合いな彼女と手を繋いで暗い道を歩いているのをこの目で見たんだ。
とても楽しそうだった。きらきら輝いてた。私が入り込む隙間なんて、小指の先ほどもないくらい。
「朔のことが心配なら、お母さんに連絡して。みんなしてどうして私に聞くの。いい加減にしてよ。朔、朔、朔、朔って」
ダメだ。私、今最高に醜悪だ。でも止まらない。自分の中のドロドロした感情が爆発してしまった。
「私は朔のことなんてどうでもいいんだから……!」
叫ぶように言うと、パシッと頬に鋭い衝撃が走った。一瞬何が起きたのかわからなくて、二、三度黙ってまばたきをする。じんと鈍い熱を感じて、やっとわかった。
想史が、私を叩いた。
「いい加減にするのはお前だ! しっかりしろよ、瑠奈。お前、そんな奴じゃないだろう!?」
大声を出されて、冷水を浴びせられたような気分になった。
そんな奴じゃないって何よ。私のことろくに見てなかったくせに、わかったようなこと言わないで。
「瑠奈!」
踵を返して走り出す。後ろから想史の声が聞こえたけど、決して振り返らなかった。
やっぱり、こんな世界最悪最低だ。あの夢の世界に戻りたいよ。



