「心配するって言うけどね、お母さんが心配しているのは朔なの。頭や見た目に差が付き始めた頃から、ずっとお母さんは朔贔屓なの。私が鍵を持って出たかわからない、だから自分が病院に行けない。それで苛立っていただけ。私のことなんてどうでもいいの。朔の近くに自分が行ければそれで良かったのよ」

「そんなこと……」

「ある。他人には良い顔して『うちはなんでも平等だから』って言うけど、本当はそんなこと、ない。絶対にない。私はいつも家で居心地悪くしてたんだ。たまには一人になりたいと思って何が悪いの。一緒にいてくれる人がいない。だからひとりでいただけ。昨夜はタイミングが悪かっただけ」


一気に言いたいことを吐き出した。スッキリするかと思ったのに、全然だった。胸の奥に石がつっかえてしまったみたいに息がしにくい。苦しい。


「それに想史だって、女の子連れて夜歩いてんじゃん。人のこと言えるの? 彼女のお母さん、心配してるんじゃないの?」


つっかえたものを吐き出したくて、そんなことまで言ってしまった。ハッとするけどもう遅い。想史はますます顔をしかめた。


「何を知ってる? 誰から何を聞いたんだよ」