「違う。ただ、ひとりになりたかっただけ」

「夜にひとりで出歩くなんて危ないだろ。小学生でもわかるよ、そんなこと。昨夜おばさんがどれだけ心細かったと思うんだよ。せめて、外に出るなら電話くらい出ろよ」


ぴしゃりと言い放たれて、一瞬言葉を失った。場の空気が凍りつく。目の前の想史の顔は、見たことがないくらい怒っていた。眉と目が吊り上がっている。

昔からやんちゃだったけど女の子には優しかった。怒ったところなんて、初めて見た。

でもどうして。どうして私が他人の想史に怒られなきゃいけないの。いったい何の権利があって、私を叱るわけ?

ムカついて、つかまれた手を無理やり振りほどいた。そうされたのが意外だったのか、今度は想史が目を丸くした。


「想史、あなたは私の何のつもり?」

「は?」

「朔と友達だから、私のこと妹だとでも思ってるの? 怒られる筋合いがないでしょ」


想史の顔が歪む。私のことをにらんでいるみたいな顔に変わる。好きでもないくせに、私に干渉しないでよ。