「え、市川さん? なんで?」

「ああ。ほら双子の……」

「そっか、市川君の妹だからか」


はいはい。朔の妹じゃなかったら想史が私に用があるわけないってね。自分でもわかってるからもう言わないでほしい。


「じゃあね穂香、バイバイ」

「あ、うん。朔によろしく」


穂香に挨拶して教室から逃げるように出ると、想史が爽やかに笑った。


「よっ、瑠奈。朔今日休みだっただろ? そのことでちょっと聞きたいことが」


もうガッカリもしないわ。どうせ朔に関する用事だろうって、最初から予想はついてた。


「場所変えようか」


ちらちらと私たちを見る好奇の目がうざったい。想史もそれは同じだったらしく、私たちは人気の少ない校舎裏に場所を移した。


「ねえ、今日は部活行かないの?」

「あとで行く。それより確認したいことがある」


二人きりでドキドキする暇もない。想史の雰囲気はいつもよりトゲトゲしているように思えた。


「昨夜おばさんから電話があったんだ。朔が倒れたんだけど瑠奈と連絡が取れなくて困ってるって。行方を知らないかってきかれた」


お母さんめ……。いくら昔から想史のお母さんと仲が良かったからって、そんな電話しなくていいのに。想史には関係ないじゃない。