「ど、ほ、どうして穂香はそんなこと知ってるの」
「朔に聞いた」
けろっとした顔で答える穂香。彼女は全然悪くないのに、ちょっと憎らしく思えた。
「そっかあ……彼女、かあ……。あーあ、私だけまだフリーか。やんなっちゃうな」
どうしようもなく涙がこみ上げる。ごまかすようにまた机の上に突っ伏した。最後の方は声が震えてうまく言えなかった。
穂香に想史のことを相談したら、朔に私の気持ちがばれてしまうかもしれない。それは絶対に嫌だった。からかわれたり本人に冗談交じりに暴露されたりしたら恥ずかしくて発狂してしまう。
幼なじみだから、一緒に登校しても不自然に思われない。幼なじみだから、優しく笑ってくれる。何気ない話題を振ってくれる。
この気持ちを知られたら、もう幼なじみでさえいられなくなってしまいそうな気がして。臆病な私はそのぬるま湯から出たくなくて、恋心を自覚した小学生の時からずっと、何もアクションを起こせなかった。せいぜいバレンタインに義理チョコを渡すくらいだった。



