たしかに先生は今すぐ命の危険はなさそうだと言ったけど、原因がわからない以上、どういう展開になるかわからない。口には出せない不安が私たちの上に重くのしかかる。

朝から先生たちのカンファレンスで治療方針が決まれば、朔はICUか一般病棟に移されるという。『朔の病室が決まって落ち着くまではそばにいる』とお母さんが言い張るので私とお父さんは帰ることにした。


「朔、どうしちゃったんだろうね」


真っ暗な車の中でぼそっと言うと、お父さんはため息をついた。


「どうしちゃったんだろうな。さっぱりわからないよ」

「だよね」

「でもまあ、きっとすぐに元気になるよ。だから瑠奈はいつも通り学校に行ってくれよ」


お父さんは明るい声でそう言った。でもそれはかすれていて、無理しているのが見え見えだ。当たり前だよね。自慢の息子が原因不明の病に倒れちゃったんだもん。朔のことなんて大嫌いだった私でさえ、心配だもん。

朔、すぐ元気になるのかな。まさか、このまま天国に……ってことはないよね。

うっかり恐ろしい想像をしてしまい、ブルブルと首を横に振る。

まだ若いもん。すぐ元通りになる。大丈夫、大丈夫だよ……。