「朔、帰ってきた?」


箸をとり、今炊飯器からよそったご飯を持ってきてくれたお母さんに何気なく聞いてみる。


「え? 誰がなんだって?」


お母さんはきょとんとした顔で聞き返す。やだなあ、まだ耳が遠くなるような歳でもないでしょうに。もう一度聞き返すのもおっくうで、『なんでもない』と答えた私はもそもそとご飯を食べ始める。

失恋と兄弟げんかといっぺんにやると、ストレスで逆に食欲が増すんだ……初めて知ったよ……。

黙々と食事を平らげてお風呂も済ませ、冷蔵庫を開ける。さっきミルクティー飲み損ねたし、何か甘い飲み物が欲しい。しかし冷蔵庫の中にはお茶しかなかった。

おかしいな。いつも朔のために私は飲まない牛乳とか、スポーツ飲料のペットボトルとかが入っているのに。たまたま切らしてるのかな。

仕方なくお茶を飲み、二階にある自室へ戻る。ドアノブを持ったまま、ふと隣の部屋のドアを見た。

やっちゃったな……。そもそも朔が気を遣わずに本当のことばかり言うのが悪いんだけど、結構ひどい事を言った。ミルクティーをぶちまけられた白Tシャツ、洗濯で綺麗になるかな。