だけどどうしてだろう。ものすごい胸騒ぎがする。とにかく、一度家に帰ろう。朔がいたって仕方ない。ここにいるのは怖い。

すべり台を滑り降り、砂で覆われた地面に着地する。立ち上がると、家に向かって歩き出した。そこで何かに呼ばれたような気がして、ふと振り返る。


「……やっぱ、そうだよね」


空を見上げると、そこには普通に月がひとりぼっちで浮かんでいた。

さっき、月が二つに見えた気がした。そう、二つたしかに空に浮かんでいた。まるで座席が横に二つ並んだベビーカーに乗せられた双子みたいに。


「乱視かなあ」


ごしごしと目をこすりながら、家の方向へ首を直す。今日はなんだかとっても疲れたな。そう思いながら帰路についた。