あれから私はずっと考えていた。私の前に双子の月はなぜ現れたんだろう。あの不思議な日々は、どうして私の身の上だけに起きたんだろう。
長いこと答えは出なかった。これからもはっきりした答えは出ないだろう。
だけど、今はこう思う。産まれた時から私たちを見守っていた月が、卑屈な私を見兼ねて大事なことを教えてくれたんじゃないかって。
ふと空を見上げる。想史の肩ごしに、真昼の月が青空の中に白く見えた。控えめにただそこにあるだけの、上弦の月。
あの月と地上のように、私も朔も距離は離れてしまっているけれど、いつも同じ世界にある。姿が見えなくても、存在を感じることはできる。
月はこれからも私たちを見守り続け、柔らかく優しい光で包みこんでくれるだろう。迷った時は冴えた光で行く手を照らしてくれる。私もそういう存在になりたい。
私はこれからも、朔と共に産まれた世界で生きていく。苦しいことも悲しいことも幸せも、思い出も未来への期待も、全部丸ごと抱きしめながら。
想史と月の光に抱かれながら、私はまた夢を見る。いつまでも、幸せな未来を。
【完】



