「ごめん。俺も勇気がなかった」
ぎゅっと抱き寄せられて耳元で囁かれたら、余計に泣けた。
私たちは同じだ。大事な物をなくしたくなくて、臆病になる。でも、そうやって臆病になったってことは、私の事を本当に大事に思ってくれているってことでいいんだよね? 大事だから、軽々しく手を出せなかった。私と一緒で想史もそう思ってくれていたってことにしちゃおう。
「大好き」
ぎゅっと想史の背中に手を回す。広い胸に顔をうずめると、あの時と同じ匂いがした。コスモス畑で想史に抱きついた時の、お日様の匂い。
ねえ、朔。本当に良いことあったよ。やっぱりあんたはすご……ん? もしかして、昨日遅くまで電話してたのは、想史から何らかの相談を受けていたとか?
やだやだ、朔のことを崇拝するところだった。危ない危ない。そうだよね、いくら双子だからって相手の未来を予知したりできるわけない。私だってできないんだから。
ただできるのは、相手の幸せを思うこと。道に迷っていたら、手を差し伸べて上げること。それくらい。
私が道に迷った時、手を差し伸べてくれたのは朔だった。朔がいなければ私はこの世界からいなくなったままで、大事な人たちを悲しませるところだった。
ねえ、朔。私たちは双子だけど同じ人間じゃない。二人でひとつなんてとんでもない。ひとりひとりが違う人間で不完全だからこそ、助け合う必要がある。そうだよね。



