「どうしてって……好きだから」
言ってしまってから、頬をほんのり赤く染める。それを見て、自分の頬が熱く真っ赤になっていくのを感じた。
「ウソだぁ。だって想史、彼女と別れたあと何も言ってこなかったじゃない」
「言えるかよ。別れてフリーになったんで付き合ってくださいなんて。めっちゃ軽いやつじゃないか」
そりゃそうだ。でも、それからうっかり二年くらい経っちゃったけど。
「それにお前も、あれから……ほら、川で溺れそこなったあの事件から」
「うん。異世界トリップ事件ね」
「それそれ。あれで、ちょっと“瑠奈って俺のこと好きだったのかな?”とは思ってたんだけどさ。お前、何も言ってこないから……勘違いだったのかと思って」
ぽかーんと口が開いた。もう少しであごが外れるかと思った。
嘘でしょ。あんなことがあって勘違いとかしないでしょ。
「違うよ。言えなかっただけだよ」
あっちの世界で想史に告白したときのような勢いづく出来事もなかったし。朔や穂香に励まされるほど、照れくさくて余計に言えなかった。
「なんだよ。もっと早く言えば良かったのか」
想史はぐしゃぐしゃと自分の頭をかいた。男の子独特の、私より硬そうな髪の毛がもしゃもしゃになった。



