ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜



あの他校のマネさん以来、彼女がいると聞いたことはなかったけど、実はいたかもしれない。朔も穂香も言ったら私がまた失踪してしまうかもと思い、隠していたのかも。

だって、この想史がずっとひとり者なんて不自然だもん。相変わらず顔はカッコイイし、日焼けしても赤くなって終わっちゃう。朔みたいにゴキブリみたいに真っ黒にはならない。

勉強もそこそこできるし、サッカー部のキャプテンだし、明るい性格でクラスメートからの信頼もあって……そんな男子にも女子にも相変わらず好かれている想史に“俺がいるじゃん”なんて言われてもね。

あれから告白しなかったのかと問われると、その通り。私はあの事件で想史に自分の思いが暴露されてしまったので、その後また仕切りなおしてわざわざ言うことはしなかった。

彼女がいる人を困らせちゃいけないものね。穂香と朔には臆病者と散々罵られたけど。そして、実際その通りだと思う。フラれるとわかっていて告白するなんて、特攻隊みたいな勇気を持てなかった。

気持ちはばれているはずなのに、想史はそれまでと変わらず私に接した。それがすなわち、想史の答えなのだと私は理解しているから。

私は彼の幼なじみで、それ以下でもそれ以上でもない。だから何のリアクションも取れないのだと。