「そ。一緒に来れば良かったのに」
「ダメだよ。俺、泣いちまうもん」
泣き真似をする想史。その様子が可愛くて、笑ってしまった。あのあとも変わらず仲良しで親友だった二人が昨日夜中まで電話で話していたのを、私は知っている。朔がいなくなって、私より想史の方が寂しく思っているかもしれない。
「私も穂香が遠くなっちゃって寂しいな」
できの悪い私に勉強を教えてくれたり、進路相談にも乗ってくれた穂香。お姉ちゃんみたいな彼女にたまにしか会えないなんて、さみしい。
「俺がいるじゃん」
「あーはいはい。そうだね」
「なんで棒読みなの」
路上で話していると、先を行っていた両親が振り向いてこちらの様子をうかがっていた。先に行ってという意味で手を振ると、隣にいるのが想史だと確認したようで、安心したように先に帰っていく。
「だって、想史はモテるもん。男にも女にも」
だから、私にかまっている暇はないでしょ。
あのあと三か月ほどで、くだんの彼女とは破局した想史。その後は部活に打ち込んで、とうとうサッカー部のキャプテンになった。県大会で良い線まで行ったんだけど、そこで終わってしまって涙を飲んだ。



