両親が先に改札に続くエスカレーターに乗る。私は何かに呼ばれたような気がして、ふと後ろを振り返った。

複雑に交互に流れていく人の波。ふとその中に朔がいるのではないかと思って探してしまった。今、新幹線に乗り込んだばかりだというのに。

苦笑し、エレベーターに乗って両親を追いかける。私、意外に朔の存在に依存していたみたい。

産まれる前からずっと一緒にいた朔がいない。それだけで、何とも言えない気分になった。喪失感と言うには優しく、寂しさと言うには足りない。

まあでも、結局は兄妹だもんね。大人になったら離れるのが当たり前。朔はそれを私よりずっと前からわかっていた。私の方がよっぽど子供だったなあと、今更思う。

そして兄妹だから、ずっと縁は切れない。嫌でもね。だから寂しく思う必要はないよね。

元気でね、朔。今度戻ってくるときは私も少しは大人になれているといいな。

最寄り駅に戻ってきて、家まで歩く。まだ肌寒い三月の風があごの下で切りそろえた髪をさらう。

両親がさっさと歩いているのをまだ慣れないヒールでゆっくり追いかけていると、ふと後ろから声をかけられた。


「瑠奈。もしかして、朔の見送り?」

「想史」


想史はまだ高校生みたいなパーカーにジーンズという飾り気のない格好をしていた。卒業したばかりだから、“まだ高校生みたい”なんて言わなくてもいいのかもしれないけど。